大判例

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東京高等裁判所 昭和54年(行ケ)208号 判決

一 請求の原因一及び二の事実は、当事者間に争いがない。

二 そこで、審決にこれを取り消すべき違法の点が存するかどうかについて検討する。

成立について争いのない甲第二号証によれば、引用意匠は、審決指摘の刊行物に別紙図面(二)のとおり表わされているものと認められるところ、原告は、本願意匠と引用意匠とは、基本形状及び係止部の形状において差異があり、類似するものではない旨主張するので判断する。

(一) 基本形状の差異について

成立について争いのない甲第一二号証によれば、本願意匠の意匠に係る物品のパイプ用継手とは、二本のパイプを十字状に交差させて接続するためのものであり、一本の線状バネ材を折曲形成して構成されており、このような物品として、本願意匠の実施されるパイプ用継手に接する取引者、需要者は、該物品の使用状態を想定しながら、これを斜視した状態でその外観を視認し、他の物品との異同を識別するのが通例であると認めることができ、本願意匠と引用意匠との差異についても、右のように斜視的に視認した状態で両者の間に意匠としての相違が現われるか否かの観点から検討するのが相当である。右の観点に立つて本願意匠と引用意匠とを対比すると、基本的形状の差異として原告の指摘する両意匠間の差異は、いずれも些少な差異にすぎず、両意匠の共通の形状からくる共通感を破つて両者を異別の意匠と認識させるに足るほどのものではないといわざるを得ない。すなわち、両者はともに、二本のパイプないし鉄筋類を十字状に交差させてこれを該部位で締結、固定する部材に係るものであるところ、該パイプないし鉄筋類を交差させた場合に、その上方筋の交差部直近前方を上方から押さえることとなるように弧状部を形成し、その両端をそれぞれほぼ下方に直線状に伸ばして下方筋の交差部直近両側に至らせ、そこから下方筋の下面に沿うこととなるように下方筋の後方(手前側)に至るまで弧状に巻いたうえ、これを同所で後方に屈曲させて手前に長く上方筋の両側に沿うように直線に引き、その端部で上方筋の上面に沿うべく弧状に形成して連続させてなる形状を呈するものであり、原告指摘の差異点は、右共通する機能的形状として視認されるものとして、パイプないし鉄筋類の交差部に対応すべき部分を本願意匠にあつては若干左右及び前方に対して拡げ、ゆとりをもたせた感じを与えるとともに、下方筋の下面に沿うべく形成された弧状部を本願意匠の方がやや浅く形成していることの差異に帰するところ、この程度の差異をもつては、共通する部位においてそれぞれほぼ同様な態様をもつた形状の連続として醸成される意匠的まとまりとして、彼此の選択を著しく刺戟するほど両者を異別のものと認識させるものとは到底認めることができないものである。

(二) 係止部の形状の差異について

本願意匠と引用意匠とが、係止部の形状において原告指摘のような差異を呈していることは明らかであり、この点は審決も相違点として挙げているところである。

ところで、本願意匠にあつては、右係止部は前認定の基本的形状を呈するものにおいて、手前端に上向きに形成された弧状部の両端から前方に直線部が伸びる部分の一隅角部に小さくまとめて形成されているものであり、一本の線状バネ材によつて構成される連続形状として視認される右全体の基本的形状の連続性を破るようなものとは認められない。しかも、本願意匠にみられるように一の線材端を小さく環状に形成した部分に他の線材の一端を短く折曲して挿入係止するようにすることは、成立について争いのない乙第六、第九、第一〇、第一一号証にもみられるとおり極めてありふれた係止方法であるものと認められ、この点と前示のとおり本願意匠において該係止部が小さく全体の形状の連続を破らないように形成されていることとを併せ考えれば、本願意匠の係止部の形状が看者に対し与える印象は外観上極めて微弱なものと認められる。してみれば、この点において本願意匠と引用意匠とを際立つて基調を異なるものとすることはできず、係止部の形状が違うことによりなんらかの係止機能上の差異が生じるとしても、右判断に影響するところはないものというべきである。

以上のとおりであつて、原告指摘の差異があるからといつて、これらの点を根拠として本願意匠と引用意匠とを類似しないとすることはできず、前認定の両意匠に共通の基本的形状に照らせば、本願意匠と引用意匠とは類似しているものということができるから、これと同旨の審決の判断に誤りはない。

三 よつて、審決の違法を理由にその取消しを求める原告の本訴請求は理由がないのでこれを失当として棄却する。

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